東信経営研究会 入会・ゲスト参加

MENU

若手経営者編

事業を継承するとは

DIALOGUE - Business Succeed

荒井木材 代表

荒井 裕貴

×

第一商工株式会社
代表取締役社長

宮本 康平

お二人が事業継承をしたきっかけは何ですか?

荒井:
僕は7年前に祖母から事業を継承しました。荒井木材はもともと祖母と祖父が個人で営んでいましたが、祖母が体調を崩したため、そのタイミングで引き継ぐことになりました。 当時は「一度やってみて、ダメなら仕方がない」という気持ちでした。
宮本:
ダメ元で引き受けたんですね。私は今年(2024年)の4月に専務取締役から代表取締役に就任しました。 入社当初からいずれは事業を継承することを前提に準備をしてきましたが、昨年の秋ごとに現会長から「来年の春に継承しよう」という話が挙がり、引き継ぐことになりました。

継承して感じた課題はありましたか?

宮本:
人材教育と今後の仕事のやり方ですね。私たちは工業部品の卸売業ですが、お客様から依頼された仕事をそのままこなすだけでは付加価値が薄いと感じています。 代表取締役に就任する前から上層部で議論していましたが、就任後は課題意識が一層重くなり、プレッシャーを感じています。
荒井:
僕の場合、当時は祖母と祖父の二人でやっていた仕事だったので、社員はいませんでしたが、お手伝いに来てくれる方が8名いました。その方々に渡す仕事を準備することが直近の課題でした。仕事の取り方も先代から教わらなかったため、当時はがむしゃらに動いていました。
宮本:
当社では営業部の社員が仕事を取ってきてくれるので、受注面の課題はありませんでしたが、荒井さんのところは自分で仕事を取ってこないといけないですもんね。
荒井:
そうですね。がむしゃらに動いても、二か月間は全く仕事が取れませんでした。でもやるしかなかったので、何度もお仕事を頂けそうなところに足を運び、何とか依頼をいただけるようになりました。
宮本:
私は他にもお客様との関係性が見えませんでした。入社してから製造部で働き、その後総務経理を担当したため、会社の財務面は比較的理解していましたが、取引先の状況は全く分かりませんでした。 そのため、今後はデータを活用して、お客様のニーズに迅速に対応できるようにしたいと考えています。 例えば、当社の社内システムではお客様毎の売上利益の比率や、金属、樹脂など、そのような分野の受注が増えているのかをデータ分析することができるため、これをもっと活用していきたいですね。
荒井:
データ活用か、すごいですね。僕のところは超アナログで祖母が手書きで帳簿を書いていたレベルでした。先代としては自分の代で廃業させるつもりだったらしく、財務もどんぶり勘定で、引き継いだ当時は会社の実態を掴むために、祖母に一つひとつ質問して何とか数字をまとめていきました。
宮本:
廃業させるつもりだったのに、なぜ引き継ごうと思ったのですか?
荒井:
祖母も祖父も同じタイミングで体調を崩し、仕事ができなくなってしまった中で、将来的な相続を考えると、色んな物が付随して付いてくるなと感じました。 例えば、荒井木材として山を保有しているので、どうせいつか自分のところに来るなら、まずはやってみようと考えました。やってみて、意外とやれそうなら続けるし、難しいと感じたら前職に戻るつもりでした。
宮本:
前職の仕事はなにをされていたんですか?
荒井:
トラックなどを整備する整備士をしていました。材木業界自体、若手が少ない業界なので、若さを期待され、徐々に仕事を頼まれる機会が増えてきました。ある意味では引くに引けなくなりましたが、荒井木材を自分でやっていこうという決意にもなりました。

継承後も大切にしたいと思う先代の考えはありますか?

宮本:
当社には先代から大切にしている品質環境方針の中に「安心」という言葉があります。私たちの会社がここまでやってこられたのは、お客様だけでなく、サプライヤー企業様や社員さんの存在もあってこそだと考えています。 例えば、サプライヤー企業様には、加工しやすいように正確な情報をお渡しし、第一商工からの仕事は安心して引き受けられると思っていただけるように徹底しています。 社員さんに対しては、バブル崩壊やリーマンショックなどの経済的変化があっても、必ず賞与を支給してきました。反対に、利益が例年より多い年でも、例年と大きく変わらない額の賞与を支給しています。景気に応じて賞与の支給額を変動させるのではなく、社員さんが安定した生活を送れるように心がけています。 もちろん、お客様にも安心をお届けすることを大切にしています。第一商工に関わって頂ける全ての方々に「安心」をお届けするというこの考えは、絶対に曲げてはいけないと考えています。
荒井:
素晴らしいお考えですね。僕も先代に荒井木材の理念を聞いたことがあります。その回答は「とくにねえ」でした。(笑) でも一つだけ、「困っている人がいたら、まずは助けなさい」と言われ続けてきました。「お金の話も大切だが、まずはお客様と対話して、自分が譲れるところは素直に譲りなさい」と。自分なりにその言葉を解釈し、お客様第一で考えて、仕事をしようと考えています。

これから先、どんな会社づくりをしていきたいですか?

荒井:
僕の代になってからも、社員はまだ採用していません。それは採用した後に安心して暮らしていける程のお給料を安定して渡せるかに不安があるからです。 また、この業界は危険が伴う仕事でもありますので、社員さんの命を預かることにもなりますから、簡単に人を採用しようという考えには中々至らないのが実際のところです。 ですが、林業も製材業も縮小傾向であるこの業界を、しっかりと続けて、いずれは法人化し、社員の命も生活も守れる会社になりたいと考えています。
宮本:
私も具体性はあまりありませんが、これまでは長野県内で仕事をしてきた中で、徐々に県外にも進出をしてきました。会社の規模を拡大したいという気持ちではなく、財務的にも強い会社に成長させたいという想いがあります。これから先、製造業はどんどん集約される時代になると考えています。 そうなった時、手当たり次第に営業をして、お客様を増やすのではなく、大切にしたい「安心」を継続的に提供しながら、徐々に強い会社江と成長させ、第一商工に任せれば大丈夫!と日本中で評価されるような会社にしていきたいと考えています。